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陰山流・日本語トレ-ニングの発行にあたって


今度の指導要領では言葉の力を伸ばすことが最大の課題とされています。
なぜでしょうか。その理由の1つとして、国際学力比較をする中で、日本の子ども達の言語能力が大きく落ちてきているという指摘が挙げられます。ここで言う言語能力の低下とは主に、“自分の考えをしっかりと表現する能力の低下”のことを指します。現在の日本教育は、一学年の人数が多く、先生が、生徒一人一人に対して、言語能力を向上させるような、十分な個別指導ができない環境になっています。また、体験学習に重きを置くばかりに、そういった、文章能力のトレーニングにつながる指導が出来ない傾向にあります。このようなことから、自分の考えをしっかりとした文章力で、表現できる力が低下してきています。
 日本の言語能力において、その面があることを私は認めますが、だからといってこれで問題がないと思っていません。なぜなら、今、国際社会で求められているのは、まさしくこの“表現する能力”だからです。
 では、表現する能力を向上させるには、どうしたらいいのでしょう。実はこの課題にこたえる指導法をドリル化したものが、『陰山流・日本語トレ-ニング』なのです。
 このドリル誕生には、裏話があります。
 このドリルを提案したのは、学研で私の担当である、木島さんという方です。彼女は、私が担任時代に書いていた学級通信をすべて読み、「陰山先生って、すごく言葉の教育にこだわっていたんですねえ。」と言ってくれたのです。
 「そりゃそうでしょう。言語は学力の細胞みたいなものですから。言語能力を高めるのは学力向上の土台ですよ。」なんて言っていたのです。すると、彼女は「これドリルにしません?」と誘ってきたのです。私は驚きました。この指導は、まったく自己流でやっていたため、そのレベルがよくわからなかったからです。しかし、効果については自分でやっていることですから、絶対の自信がありました。とはいえ、国語の授業で言語能力を高めるためには、いくつかのポイントに注意すれば、それほど難しくはありませんが、それをドリルという教材の形で作るには、かなりの努力が必要だと感じました。しかし、効果に自信があるのなら、時間がかかっても本気でやろうということで作ったのです。
 まずこのシリ-ズでは、聴き写しや書き写しを中心とした『百ます書き取り』と、文章作りを中心とした『あなうめ作文』の2冊を作りました。ドリルの特色をよく理解していただいて、しっかりとした言語能力を身につけてください。21世紀を生きる確かな言語能力が育つと確信しています。

『百ます書き取り』 陰山流・日本語トレ-ニング


『百ます書き取り』
 このドリルは、2つの力がつくようにしました。1つは、人の話をきちんと聞き取り、その意味を理解し、“聴き写し”ていける力をつける。もう1つは、実際にある文章を理解しそのまま“書き写す”ことができる力をつける。これらのためのドリルです。
 まずは、“聴き写し”についてお話します。
人の話を聞き取るのは、一般的に態度の問題とされることが多いものです。しかし私はある時、授業をしていて、これは能力の問題だと気がつきました。つまり、能力の低い子はどんなに態度よく聞こうしてもきちんと聞き取ることができず、みんなと同じような学習ができないということに気がついたのです。聞き取る能力が低いと、しっかり聞こうとしても意味が理解できず、低学力になってしまうのです。
 子どもが学習している時、話すこと・書くこと・読むことの作業は、学習レベルがはっきりと見えるので、指導しやすいのです。しかし、聞くという作業は、しっかりやっているのかどうかも見えず、また、それを能力的にどれくらいのレベルになっているのかも、分かりにくいのでやっかいです。
 それで聞いた内容を時間内に書き写すことを訓練することで、聞いた内容を瞬時に頭の中でまとめられるようにしたのが、このドリルの聴き写しの部分となります。
 もう1つの、“書き写し”についてです。
 書き写しが重要なのは、黒板に書かれた内容をノ-トに書き写す必要があるからです。子どもが黒板の書き写しが遅いと、授業のペ-スについていけなくなります。書き写すのが遅くなる理由は、1つは、書くことそのものが遅いということがあります。しかし、見落とされがちなのが、文章を読んで、その内容を頭の中に瞬時に記憶する能力が低い場合が多いということです。そういう子は、ひどい場合、一字ずつ書く子もいます。ただ、それはその子が悪いというのではありません。ある程度文章を覚えておいて、一気に書くというのは、意外と難しいことです。ですから、一文節くらいは覚えておいて一気に書けるようにしておかなければ、これも授業についていけない原因になってしまうのです。
 こうした授業についていけなくなる原因というのは、ある程度熱心に授業研究をした教師でないと気がつかないものです。ですから、現実には「ちゃんと聞きなさい。」とか、「さっさと書きなさい。」とか注意され、自信を失い、さらにそれが混乱を誘い、ますます書けなくなり、コンプレックスの固まりとなり、自分を馬鹿だと思い、落ちこぼれていく要因になるのです。
 私はこうした聴き写しや書き写しの練習を年度始めに行い、みんなが一定のレベルで授業に参加できるよう指導していました。こうした指導をすることによって、まず、子どもが自信を失うという場面を減らしました。その結果、伸びる場面が増えることにつながっていき、集中した授業につながっていったのです。

『あなうめ作文』 陰山流・日本語トレ-ニング

『あなうめ作文』
 子どもの学習の苦手な分野のひとつに作文があります。なぜ作文が苦手かというと、作文の書き方を十分に教えてもらっていないうえ、「思ったことを自由に書きなさい。」などと指導される場合があるからです。
 また、作文というのは言語能力の中でも、最も高度な能力を必要とします。なぜなら、文章を書くためには、まず文字を書くということが必要だからです。適切に漢字が使えないと文章になりませんし、同じ内容でも幼稚な文章になってしまいます。
 また、文字が書けても、適切な文章表現や表現方法なども知っておく必要があります。よく「○○でした。○○でした。おもしろかったです。」というように、断片的な文章をつなげて書いた文章では、とにかく読みづらく、何より面白くありません。比喩などの表現方法を知っていれば、文章も生き生きとし、子どももやりとげた達成感を持ちます。一般に、比喩などの指導は、国語の言語事項の中で理解の分野として扱われることが多く、日常、日記などに書くような指導はあまりありません。さらに、これができるようになったとしても、今度は文章を組み合わせ、段落を構成し、ひとつの意味のある、まとまった文章にしていく必要があります。
 この段落構成の基本は「起承転結」ですが、これを日常の作文や日記などに応用するのもまれです。
 私は、まず書き慣れるということで日記指導を重視し、とにかくどんどん書くことを指導しながら、段階に応じてその表現を指導していくのです。文章の表現は無限にありますが、表現技法や段落構成の基本はある程度決まっています。計画的に指導すれば、一年でも十分な学習効果は得られるでしょう。ここでも、その決めては反復です。
 今私の個人事務所には、山口小学校時代の教え子が来てくれているのですが、このドリルの話をすると、瞬時に「起承転結の指導ですか?」と返事が返ってきました。もう大学も出ているのですが、小学校時代の指導がこんなに生きているなんて驚きました。そして、今は私が忙しいとき、代筆が十分務まるほどに活躍してくれています。
 私もこんな形で、指導が生きてくるなんて意外なことです。
 このドリルでは、小学校時代に、これだけはという、そして本当は大人でも十分に通用する基本的な文章作りの指導をドリル化しています。どうか、このドリルを生かして、実用的な書く力を身につけてください。

陰山英男新刊案内


「脳が目ざめる!朝ごはんレシピ」

陰山英男監修著書
出版社 小学館
タイトル 「脳が目ざめる!朝ごはんレシピ」
発売日 6月13日(水)
定価 1575円(税込)
ISBN 978-4-09-105309-1
B5版 96ページ・オールカラー

早寝・早起き・朝ごはん!
早い、おいしい、頭ハッキリの「食育」プランを、提唱者・陰山英男の企画監修で、具体的レシピとしてお届けします。


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