陰山ブログ

全国学力テストにおける大阪の結果について

今年の全国学力テストの結果が発表されました。中学は伸び悩みましたが、小学校は急上昇と地元のメディアでも報道され、高く評価されました。全国の報道ではそれほどでもなかったので、正直ほっとしました。

 順位で評価するのは適切でない部分もあるのですが、一番わかりやすいので、ここではそれを分野ごとで書きます。
国語では基礎部分のA区分が、昨年42位だったものが、41位に、応用力を問うB区分が45位から34位に、算数ではA区分が昨年36位だったものが28位に、応用分野のB区分は34位だったものが27位に上がりました。
 
 まず、この実践について重要なことは、実質的には2カ月しか対策期間が取れなかったにもかかわらず、はっきりとした効果が確認できたことです。大阪府の教育委員に就任したのは昨年の10月。そこから実践内容を決め、ようやく現場におろせたのは、12月中旬。実に胃の痛くなる期間でした。ですから、実質的な指導期間は、2カ月しかなかったのです。それでここまでの結果、本当によかった。
 次に重要なのは、実質的に指導したのは、読み書き計算だけなのに、基礎だけでなく応用区分の成績も十分に伸びたことです。このわずかな実施期間も、まるで妨害するかのように、基礎学習ばかりやっていると基礎学力も落ちてくると、何の根拠もない批判を現場に浴びせてくる教育学者がいました。こうしたあまりにも安易な批判に対して、実際にはそうならないことを事実は示したのです。
 
 私は、こうした事実を生み出した現場の先生方に、感謝をしたい。厳しい環境の中、よくがんばってくれたと。
そして、次に考えていただきたいのは、方法さえ間違えなければ、短期間でも、このような結果を出すことは可能なのに、なぜそうした努力がこれまでできずにいたのか。そのことを振り返っていただきたい。このことを通じて、結果に対して責任を持つプロ意識が再構築されると思います。政権交代によって、この学力テストは終わりになるかもしれません。しかし、大阪の教育の信頼回復の取り組みは始まったばかりです。いかなる方法を通じても、この流れをとどめることにはならないでしょう。
今のこの時点は、ゴ-ルラインではなく、スタ-トラインであることを自覚していただきたいと思います。

 中学の成績が思うように上がらなかったことについても、コメントします。
私達の過去の実践によっても、中学の学力向上は制度的に難しいということがわかっています。この中学の学力向上が難しい基本的理由は、まず数学などの主要教科の学習時間が大幅に減っていて、小学校レベルの復習をやらせる時間の確保が難しいということがあります。さらに、教科担任制ですから、小学校の学級担任制に比べて、時間の融通が難しいということが追い打ちをかけます。
 しかし、それに大阪の中学校は甘んじていたか。そんなことはありません。それまであまりなされていなかった放課後指導を、全国平均以上に今回力を入れたという数値がはっきりと出ています。努力はなされているのです。今後は、ここを乗り越える工夫を、中教審の委員としても提起していきたいと思います。

 なお、橋下知事が中学の成績について、辛口のコメントをされていますが、それはデ-タを見ず、順位だけを聞かれた段階でコメントを無理に求められたからであり、議論のあるときは、私は現場を全面的に弁護するつもりでいます。
また、各自治体の首長のみなさんにも、この実践の期間、ものすごく応援をしていただきました。新しい教育機器の導入についても、全国でも突出するような電子黒板の全学級への配備を決められた首長さんや、DS活用への特別指示を出された首長さんなど続々と出てきています。知事の耳にはこうした事実がまだ届いていないようですので、何かの機会にお伝えし、来年に向けて関係者一同の努力が生み出されるよう努力したいと思います。
 今後、さらなる分析の中から、本当に優れた実践をした学校や地域がわかってくると思います。そうした人々の努力を、大切にすることを忘れずに努力したいと思っています。

        陰山英男