陰山ブログ

全国統一学力テストの結果を受けて

 全国統一学力テストの結果が出てきました。結果は、ほぼ予想通りの結果でした。
 
 まずその結果の概要ですが、知識・理解を問うA問題が約8割の正答率、応用力を問うB問題が約7割の正答率で、県別の格差は一部の県を除いてそう大きくないというものでした。
 まず、なぜA問題の正答率が高かったのか。その理由は、各学校の努力が定着してきているからだと私は理解しています。今や、百ます計算が子どもの心を荒らすなどという勝手なことを言う教師は、特別な思いを持つ人に限られています。それほどに学力向上の取組みは浸透しました。
 このテストの前、文部科学省は、50万人を対象として教育課程実施状況調査を行いました。その結果、平成15年にはすでに学力は向上していることを示していました。この平成15年というのは、学力低下問題が噴出し、百ます計算のブ-ムが本格化した年なのです。ところが、その学力低下問題が話題になった年に、なぜ学力が高かったのか。
 そのからくりは、試験の実施時期にあります。
 学力テストは年度の終わりに行われます。つまり、平成15年度といっても、実際は平成16年の2月に行われています。それは学力低下問題が噴出して約1年後ということで、その一年で学力向上の取組みが行われ、子どもの学力は伸びていたのです。
 何度も言いますが、知識理解などの成績は、きちんとした実践を行えばすぐに上がります。上がらないのは、上がらないような指導に終始しているからです。この間、計算や漢字などの学力向上の取組みは、全国的に広がりました。A問題の正答率が高いのは、当然だったのです。
 一方、B問題の正答率はA問題よりやや低く、それをもって応用力の不足と言われていますが、それは適正な評価ではないという気がします。というのは、あのような問題形式は、今の日本の学校教育の中にはなかった形式だからです。
 それほど高度な問題ではないが、見たことがないという点で、思うように成績が高くならないのは当然のことです。もし、来年も同じような授業をして、同じようにテストを受けさせていたら、あまり成績は上がらないでしょうが、今回のテストを念頭におけば、きっとそう困難なく、5%くらいは成績は上がると思います。
 ここで、ひとつ問題があります。
 ある新聞が社説で、テストのための授業になったら本末転倒であると書いていましたが、それはどうかということです。私は、半分はそうだが、半分は違うと思っています。というのは、対策は取るべきと考えるのです。今回、こうした過去になかったB問題が作られたというのは、こうしたタイプの問題に答えることのできる力を育ててくださいというメッセ-ジなのです。
 ある教師が研究会の場で、「今やっている授業で、あのB問題が答えられるようになりますか。」と会場の教師に聞いていました。答えられるようになると言ったものはいませんでした。また、総合的学習をやればできるようになるというものでもありません。あの問題は、まさしくああいった場面を想定した課題解決型の授業をやり、そしてそれらを文章化して考えるということを日常的にやっていくのが一番いい方法なのです。
 つまり、テストをきっかけとして授業のあり方を変えるということが求められているのではないだろうかと感じています。