新しい年度が始まって、この陰山サイトも再スタ-トを切り、多くの方にアクセスしていただきました。本当にありがとうございました。私の方も、このサイトに限らず、活動の幅を広げるために、さまざまな基盤作りを始めました。今年一年かけて、多くの方の期待にこたえられる状況にしていきたいと考えております。よろしくお願いします。
さて、掲示板の中で、なぜ立命館に移ったかという質問がありました。一年たったところで、再度お答えしておこうと思います。
立命館に移った理由は、ただひとつ。より多くの方の期待にこたえるためでした。よく、公立から私立に移ったという言い方をされますが、そうではないのです。当時は、多くの仕事を抱え、ありとあらゆるものが限界を越えていました。時間的なもの、精神的なもの、体力的なもの、ぎりぎりでした。そこでそれを乗り越えるために決断したのが、研究職に移ることでした。研究職に移ることで、立命館小学校は当然として、公立や私立の枠組みを越えて、ありとあらゆる方と協力しながら、子どもを伸ばすことができるようになったのです。
そして、一年が終わりました。そして、今振り返って、その判断はよかったと思っています。
そう思う第一の理由は、実践が大きく広がったことです。昨年度、立命館小学校のみならず、山陽小野田市や室戸市、八幡市、佐賀県、宮城県など、公立私立を問わず、生活習慣の改善と読み書き計算を組織的に行うところが出てきました。学校単位ではなく、地域単位での実践は初めてのことでした。
それから、あまり知られていませんが、私が提案した学校教材は、現在十万以上出ており、あれほど非常識と思われた漢字の前倒しも、私の知らないところでも急速に広がっているのです。
理由の第二は、地域の広がりとともに、研究者としてかかわることで、多くのデ-タがそろい、より多くの地域での実践ができる可能性が出てきたことです。現在、この実践に対する関心は、すでに海外でも高まっており、私と共同研究してきた小河先生は、スリランカで百ます計算を広めています。数年前に始まったアフリカでの実践に加えて、今年は中国やアメリカでも実践研究したいという要望が出されるなど、途上国のみならず先進国でも関心が高まっているのです。
理由の第三は、文部科学省の中央教育審議会や内閣官房の教育再生会議有識者委員として、現場の実態を国の中枢部に伝えることができたことです。私の場合、教員免許の更新制に対して疑問を投げかけるなど、全体の方針に対して異なった考えを言う場合があります。正直、そういうとき度胸がいります。しかし、社会に対して学校現場の空気を伝えることも私の大事な役目と考えています。そのためには、多いとき週に3日も東京に行かなければなりません。けれども、それほど改革のスピ-ドは速く、激しいのです。だからこそ言いにくくても、現場の事実を伝える必要があります。十数年前、つめこみ教育批判から来る教材の削減が、社会全体から支持され、今日の混乱を生みました。現場を正確に把握しない改革はとても危険です。
でも今は、私の意見はあまり省みられてないと思うこともよくあります。ただ、それは私の方が間違っている場合もありますから焦りはありません。むしろ、こうして言うべきことを言っておくことで、もし将来、改革がうまく行かないと判断されるとき軌道修正がすぐにできるでしょう。何も言わないことが一番問題だと思っています。
漢字検定では、立命館小学校開校半年で全員受験、全員合格で、文部科学大臣賞を受賞しました。土堂小学校は2年連続で最優秀賞、また土堂小学校方式を採用した尾道市立久保小学校は優秀賞でした。この事実こそが、私の決断の意味でした。
そして、この新しい段階は、始まったばかりです。今週は、いよいよこうした教育にも高い関心を持っているビルゲイツ氏とも会います。今までのみなさんのご支援を感謝し、これからも原点を忘れずがんばろうと思います。
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