前回のブログで報告しました、安倍前首相の土堂小学校視察の際、山陽小野田市から江澤教育長さんを招いて、この授業の特色について説明をしていただきました。山陽小野田市は、山口県の小さな地方都市ですが、全部の小学校の全学級に一昨年の春から土堂小学校形式の授業を取り入れていただいたのです。この全市一斉の実践は、画期的な意味があります。それは、この授業に陰山がいてこそ指導できる特別なものではなく、いつでもどこでも誰にでもできる汎用性のある授業であることを実証する意味があったことです。
また、この実践は、江澤教育長さんが中心になることで、もうひとつ重要な意味が加わったのです。それは、この実践の科学的分析が可能になったことです。これは、私が望んではいても、なかなかできないことでした。なぜ、それが可能になったか、実はこの江澤教育長さんはもともと物理学者で、教育長になる前は、地元の大学で物理学の教授をやっておられた方なのです。
この実践について語ると、それでもう一冊の本ができてしまいますし、事実今準備中です。そこで、ここでは重要なことをひとつだけ書いておきます。
それは、百ます計算のようなことを毎日指導していると、思考力は落ちてくるというようなことがまことしやかに言われることが多いのですが、山陽小野田市の実践分析からは、モジュ-ル授業によってもっとも伸びてくるのは思考力であるという結果がまとまってきていることです。これは、知能検査の因子分析から導かれてきた結果です。
モジュ-ル授業を指導すれば、短期間で劇的な知能指数の上昇が起き、結果的に短期間に学力向上を実現するというのが、確認されていることですが、何とその学力向上を支えているのは、知能の向上でも思考力の部分だというのです。
モジュ-ル授業の実践をやっていると、確かに算数の学力テストでも思考力部分の伸びが顕著です。ただ、その理由がわからなかったのです。それで、私はモジュ-ル授業をやると計算力が高まり、その分多くの文章問題などの思考問題に取り組むことができるからと思っていたのです。しかし、そうではなく、思考力を伸ばす働きがあるということが分析の結果わかってきたのです。
何カ月か前に、ある週刊誌に食品の偽装にからめて、百ます計算などの流行によって、子どもたちの思考力が落ちてきているという学者さんの批判記事が出ていました。私は、内容的に事実誤認があると思っていましたが、こうした批判の仕方は何回も何回も出てきていることですし、その一方で学力向上の実践結果もあるわけですから、反論の必要もないと思ってきました。しかし、こうした分析の結果が出てきたことで、私たちも自信をもって、百ます計算で思考力が落ちることはないと言えるようになったのです。
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