アメリカへ行って一番ショックだったこと。それは通貨としての円の弱さです。日本で為替を確認した時には1ドル120円代だったのですが、アメリカ現地で両替するとそれよりも高く、手数料も含めて、なんと1ドル139円程度かかってしまいました。
アメリカには、治安上の理由でドリンクの自動販売機がありません。どうするかと言えば、我々が自動販売機でドリンクを購入するのと同じように、スターバックスコーヒーを利用します。移動の飛行機の中でも、研究会で配られるのも、ほとんどがスターバックスです。日本における自動販売機と同じように、スターバックスが非常に普及していました。肝心の値段ですが、コーヒー1杯が3ドル程度。円で計算するとだいたい420円くらいです。海外に行くと物が安いという感覚を持っていた私にとって、やや割高感がありました。
この時思い出したのが、先日読んだ『ひきこもり国家』(宝島新書、高城剛)という本です。クリエイターとして活躍している著者が、世界中を見て回っているうちに経済について考えたという、ある意味異色なものです。その中で、日本は国内のことばかりを見ていて、世界からどのように見られているか意識することがない、と指摘されていました。
もともと島国であることからの気質もさることながら、昨今の政治情勢で、さらにその傾向が強くなってきているのではと私も思います。その結果、何が怖いかと言うと、‘経済大国日本’というかつてのイメージのままで、今の日本をとらえてしまうことです。
今回のアメリカ行きで、‘経済大国日本’というものは、かなり危ないレベルに来ていると実感しました。缶コーヒー感覚で利用するスターバックスコーヒーが400円以上すること。ホテルに泊まっても、かつての割安感がないこと。タクシー料金も高く感じてしまうということ。また、これは聞いた話ですが、イギリスでは、現在地下鉄の初乗り運賃が日本円にすると千円以上かかってしまうそうです。ちょっとしたアパートを借りるのも、家賃が最低30万円くらいかかってしまうそうです。
かつて、世界から日本は「物価が高い」と言われていました。単純に物価が高いということもさることながら、円が強かったということが大きく影響していました。かつて、英国病と言われたものが、今、日本を襲い始めたのではないでしょうか。
背景の一つとして考えられるのは、グローバリズムであろうと思います。グローバリズムとは、一言で言うと、世界中を相手に、一番勝ちがすべてを持っていくというシステムです。今回の旅行の中では、スターバックスが一番象徴的に思えました。スターバックスは1971年にシアトルで創業されたという、比較的新しい企業です。にもかかわらず、アメリカ国内での普及にとどまらず、日本を始め、世界中に店舗を持っています。情報が瞬時に世界を飛び回る現代において、流通ルートを確立してしまえば、一気に優位性を発揮できるという象徴を表しています。メジャーリーグにしてもそうです。今や世界中の優秀なプレイヤーが集まり、日本のプロ野球はメジャーリーグの2軍かとも揶揄されるようになりました。
もう一つは、世界の生産工場としての中国の存在です。かつて、日本製品と言えば、‘安くて性能が良い’と海外で人気がありました。しかし、現在ではその立場は中国に取って代わられています。アメリカ滞在中、ショップで地図、地球儀といった知育グッズを見て回っていても、良さそうなものは‘made in China’となっていました。また、私は個人的にオーディオが趣味なのですが、アンプにしても、中国製品の対コストの性能が非常に高いと感じています。他の国で作られたものの10分の1程度の値段で、最高級品の7~8割程度の音の良さを発揮するものもあります。
翻って、日本の経済を見てみましょう。ニュースなどでは経済の復活ということが言われています。不良債権の処理が終わり、株高であるなど、一見順調に動き始めてきているようです。しかし、それは基本的に円の金利が安いからです。国際的な水準から見ると、異常なまでの安さです。円の金利が国際水準まで引き上げられた時、今の景気が生き永らえることができるかと言えば、非常に疑問です。
そういった背景をもとにアメリカから日本を見た時、ドルの復活と円の凋落、つまり、グローバリズムの中での光と陰というものを非常に色濃く感じました。そして、その最も中枢的なことが、通貨としての円の弱さであったのです。
教育においても世界の経済情勢をしっかり見据え、しっかりとした人づくりをしなければいけないと強く感じました。
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